やまた幼稚園

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園だより

2018/12/05

幼児教育はどこに向かっているのか

2017年2月の園だよりをお伝えします。

大寒を迎え寒い日々が続きますが、日没はだんだん遅くなり、光は春の色に変わってきています。よく見れば、水仙が咲き梅が香り始め、あちらこちらに春の兆しを見つけることができます。

年中児、年長児の間で、「もうすぐ年長さんだから」とか「もうすぐ小学生だから」という言葉が聞かれるようにもなりました。残りわずかとなった28年度ですが、子ども達が自信を持って次のステップを踏み出せるよう、小さな成長を見つけ、励まし、寄り添っていきたいと思っています。

先日、所属している玉川大学の学習会において、レッジョ・エミリア・アプローチについての発表をする機会をいただきました。このテーマに関しては、4月にイタリアを訪問して以来、プレゼンテーション資料を作り夏の職員研修で報告したこと、園だよりで2ヶ月にわたり連載したこと、そして更に数ヶ月を経て再度振り返ったことで徐々に理解が深まり、今回、自分のものとして咀嚼することができたという気がしています。

他にも何人か発表者がいましたが、うち一人はデンマークの幼児施設の視察をもとに、民主化教育と絡めながら話をしてくれました。デンマークは、世界幸福度ランキング連続1位という国で、フィンランドと同様、ノルディックモデルと言われる高福祉高負担社会です。セーフティネットが充実しているおかげで失業率・離婚率ともに非常に高く、高齢者医療には公的資金が高い割合で投入され、大学までの教育費は無料です。未就学児の教育は、子どもたちの「自主性」と「探究心」を育むことが大切であるとされ、極力大人の介入なしに、個々の子どもが好きなこと、興味を持ったことを追求する姿勢を推奨しているのだそうです。この点に関しては、レッジョにつながる部分があります。そして、民主的な社会の一員になるための基礎教育として、自己決定と自己責任が重要視されているとのことです。

レッジョで大切にされている市民教育、同時にデンマークの民主化教育を学び、日本はどの方向に向けて子どもたちを育てていきたいと考えているのだろう、と身近なことに思いを馳せました。

日本での最近の流行りはアクティブラーニングでしょうか。先日の学習会の全体テーマもアクティブラーニングで、『なぜ教えない授業が学力を伸ばすのか』という本をもとにディスカッションも行いましたが、よく考えると、幼稚園はもとからアクティブラーニングだよね、という話が幼稚園関係者からは出ていました。なぜかというと、子どもがアクティブでない限り、そこに学びはないからです。究極の理想としては、大人は言葉を多用せず、子ども達を観察し、そこにある学びを解釈する(見取る)こと、まさに「教えない教育」そのものですが、その前提として子どもの持つ可能性を信じる教育観が必要なことは言うまでもありません。デンマークの森の幼稚園の先生は、「大人が子どもに教えることは何もない」と言っていたそうです。それが、小学校に入った途端に、アクティブラーニングという言葉をわざわざ出してこなければ、主体的な学びが成立しなくなってしまう、というのはどうしたことでしょうか。大変に勿体無いことであり、接続する小学校との連携が重要で、公式非公式な場にかかわらず、お互いを分かり合おうとする姿勢が教育をより良いものにしていくのではないかと思っています。

今、財政難に陥った自治体の小学校では正規職員の数が減らされ、一人分の人件費で非常勤職員を二人雇用することがあると聞きます。常勤でなければ担当できない校務も多く、多忙の極みの常勤職員の間では、校務が煩雑すぎて回らないという事態も起こっているそうです。減らされる教育関連の予算に対し、文科省は予算の引き上げを求めていますが、逆に職員を増やすことによる実質的な結果を出せ、と言われているようです。その反論はもっともだとは思いつつ、教育の成果はすぐに出るものではないのに、という思いもあります。どうすれば良くなるのだろうかと悩む日々です。

編集後記

デンマーク発祥の「森のようちえん」をご存知でしょうか。園舎や園庭を持たず、毎日森に出かけ、そこで幼児教育を行ったのが始まりで、デンマークでは国から認可を受けた正式な教育機関です。森と言っても植林された平地で、日本のイメージでは林のようなところで保育が展開されます。一斉活動は見られず自由遊びが中心で、当然ながら遊具はなく、虫探しや探索をしたり、倒木が格好の遊び場になったりしています。昼食は、子どもたちが手伝いをしながら森の中でパンを焼き、スープを作って済ませます。そういう経験を積んできた森のようちえん出身児は、自立度が高く、状況判断、社会性で優れ、大人が世話をしなくても良くなると、小学校教員の評判は良いようです。ところが最近の問題として財政難が挙げられており、以前は大型バスで遠くの森まで出かけていたのが、バスが借りられなくなり、リヤカーや自転車で近くの森に出かけるのが精一杯になってしまった園もあるのだとか。森には何ものにも変えられない魅力があるのに、もし森に出かけられなくなったらどうなってしまうのだろうと、視察に行った友人は先行きを心配していました。スタンドでのコーヒー一杯が1,500円もするほど物価(つまり消費税)の高い国でさえ、十分な財源を幼児教育に回すことのできない現状なのだそうです。

園長 栗原弥生

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