やまた幼稚園

BLOG

園だより

2018/12/05

子どもの育ちを可視化する

2016年7月の園だより特別号をお伝えします。

朝の靴箱で、右と左の靴を履き間違えた年少児に「お靴が反対みたいだね。それは右に履いてごらん」と声をかけました。大概の年少児は「右」という概念がないので、納得したようなしないような顔をして、とりあえず靴を反対の足に履き直します。それを見ていたある年長児がこう言いました。「私もね、前は右と左がわからなかったの。でも、なんでわかったかっていうと、右はよく使う方だな、って思ったんだ」 なるほど。彼女は、生活の中で自らが実感していることと、「右」「左」という記号が、ある瞬間に合致したことを、新鮮な喜びとして記憶していたのですね。このような気づきやつぶやきを保護者の皆さんとも共有したい、そういう思いで始めたポートフォリオです。お子さんの成長の記録として楽しんでいただけたら嬉しく思います。

毎日子ども達と接していると、「子どもは日々育ち成長している」と実感するシーンが度々あります。泣いている子にポケットのティッシュを差し出したり、優しい言葉で慰めたりする姿。園庭の片隅の草むらに隠れているダンゴムシを発見し、手にとってじっと眺める姿。友だちと縄跳びをしながら、「○○ちゃん、すごい」と素直に相手を讃える姿。子ども達は、探究心や社会性、優しさというものを、遊びを中心とする生活の中で身につけているのだと思う瞬間です。

私たちは、人生の土台となる部分を築いている子ども達一人ひとりのこのような姿を、他の職員そして特に保護者の皆様にお伝えしたいと思っています。しかしながら、「育ち」や「成長」を評価する指標として私たち大人が陥りやすいのは、「できる・できない」「上手・下手」「正しい・間違い」というものの見方をしてしまうということです。

今月の園だよりでお伝えしたように、大人から教え込んだ知識や技術を再現する精度を重視する保育のあり方から、子どもが主体者として生活し、考え、学び育ち、大人がその子どもの姿に目を向け、耳を傾けようとする保育のあり方に注目が集まるようになっています。その中で保育の質を測る指標の一つになるのが、子どもをどれだけ丁寧に見、記録するか、育ちが「見える化」されているかということです。乳幼児期の生活、遊び、学びのあり方(保育の質)が、その後の人生を左右するキーになるとして、ヘックマン教授を始めとして様々な研究者が調査を続けています。就学前教育で大切なのは、IQなど数値で測れる認知能力だけではなく、数値に表せない非認知能力(忍耐力、やる気、自信、協調性など)を豊かにすることだとは、前回お話しした通りです。

今回持ち帰るポートフォリオは、子どもの「学びや育ちの過程」を文章による記述と写真によって記録しファイルしたものです。今を生きる子どもの学びと育ちを「見える化」し、評価する材料になります。結果のみにとらわれた記録ではなく、今の姿を捉え、今後のより良い育ちにつなげる記録です。

では、どのようにすれば次の保育への見通しにつなげることが可能になるのでしょうか。子どものポートフォリオは各クラス担任が作成するため、そこには担任の目を通した姿しかありません。それを他の保育者と目を通し合うことで、担任には見えなかった子どもの姿が浮き彫りになり、時には子どもの心の声までのが聞こえてくることがあるといいます。乳幼児期の子どもは、発達段階を行ったり来たりしながら成長しています。一方向からの見方ではなく、多方面からの意見を聞いて成長を見える化していくことにより、保育の質が向上していくのです。

このポートフォリオは世界各国で実践され、国によってラーニング・ストーリー(ニュージーランド)、ラーニング・ダイアリー(イギリス)、ドキュメンテーション(イタリア)などの呼び方をされています。本日はニュージーランドに於ける保育の第一人者でありラーニング・ストーリーの研究者でもあるウェンディ・リー氏の講演会に参加し、遊びの中にある学びをどのように読み取っていくか、具体的に学んできたいと思っています。

園長 栗原弥生

RELATED INFORMATION